==========================
   ア ク タ   acta  第6号 
==========================

                   1994/12/20発行

−−−−−Marbot著“Vie de Mgr Forcade, archeveque d'Aix, Arles et Embrun”
                             について−−−−−

 「エックス、アルルおよびアンブランの大司教フォルカード猊下の生涯」"Vie de Mgr Forcade,archev que d'Aix, Arles et Embrun”(以下“Vie de Mgr Forcade”)は、フォルカード召天の翌年、1886年、エックスで出版された。著者のマルボー Marbot, E. はエックスの副司教で、フォルカードの秘書を務めたこともある人物であり、複数の著作を残している。
 628頁に及ぶ本文は五編に分かれ、それぞれ「ヴェルサイユ編(1816-42)」,「中国・日本編(1843-52)」,「グアドループ編(1853-61)」、「ヌヴェール編(1861-73)」、「エックス編(1873-85)」となっている。また、フォルカードのポートレート1点と司教・大司教として用いた紋章が4点掲載されている。
 伝記の骨格を形作っているのは、フォルカード自身が残していた克明な記録である。しかし、琉球滞在に関する完全な日記を含む第1巻は、1847年に一時帰国した旅の途上で失われた。その間の事情について、マルボーは次のように説明している。スエズに着いた。窮屈な乗り物で砂漠を横切らなければならなかったので、荷物をできるだけ軽くした。荷物は別にラクダに乗せられることになっていた。フォルカード猊下はこうした措置を知らされると、慎重を期して、最も大切にしていた品々を小さな袋にまとめた。その中には、全日記、1839年3月17日の最初のミサからすべてのミサが記載された手帳、王妃マリー・メアリーのために用意した大変美しいロザリオなど。しかし、これはほとんどかさ張らないものであった。乗り物に座るとすぐに、紳士とは言いがたい(中略)イギリス人に声をかけられた。この男は彼に袋が大きすぎると言った。「わずかなものだ」「荷物の中にに入れてくれ」「ひざの上において置く」「だめだ」それだけの理由だった。小さな袋はもって行かれてしまった。「着いたら、荷物の中に入っているよ」と、このイギリス人は遠ざかりながら言った。そして着いてみると,小さな袋だけがなくなっていた。
 こうして、琉球滞在および日本近海の航海についてのより詳細かつ膨大な日記という貴重な史料は紛失した。したがって、現存する“Le premier missionnaire catholique du Japon au XIXe si cle”(以下 “Le premier missionnaire”) は、1844年4月28日から1846年10月10日までの日記の抄録である。
 “Vie de Mgr Forcade”の「中国・日本編」の内容も、こうした事情から、“Le premier missionnaire” とほぼ同じである。しかしながら、1843年のフランスからマカオへの船旅、日本代牧区設置と代牧任命に至るプロセス、1852年に宣教会を退会した前後のいきさつなども含まれ、従来の研究を補足する史料となる。
 また、「ヌヴェール編」と「エックス編」には、終生初代日本代牧であったことを忘れず、1859年に再開された日本布教のために尽力し続けたことを示すフォルカードの言動が随所に見られる。これは今後のフォルカード研究の一助となりうるものである。
 この伝記の第2版は、1889年、エックス大司教区の双書『エックスおよびアルルの聖なる教会』“La Sainte Eglise d'Aix et Arles”の第6巻として出版された。その際、題は『我々の司教。エックス、アルルおよびアンブランの大司教テオドール・オーギュスタン・フォルカード猊下の生涯』“Nos eveques. vie de Mgr Theodore-Augustin Forcade, archeveque d'Aix, Arles et Embrun”と改められ、巻頭には、ラヴィジュリ Lavigerie 枢機卿をはじめ、アヴィニョンの大司教、マルセイユやグルノーブルの司教から初版出版後に寄せられた賛辞が10頁にわたって掲載された。

 この“Vie de Mgr Forcade”については、中島昭子が、本年9月17日のキリスト教史学会大会の研究発表の際に簡単に紹介した。詳細については「フォルカード神父とカトリックの日本再布教」と題して、論文を発表する予定である。

 1)“Vie de Mgr Forcade”pp.163ー4
 2)同書の全訳が中島・小川訳『幕末日仏交流記
  −フォルカード神父の琉球日記』(1993)である。

BackHome