========================== ア ク タ acta 第5号 ==========================
1994/11/20発行
−−−−デュモン・デュルヴィル著「図説世界周航記」の図版について(1)−−−−
『幕末日仏交流記
フォルカード神父の琉球日記』第1章にデュモン・デュルヴィル Dumont
d'Uevilleという人名が2度出てくる(13,28頁)。その人物の著作「図説世界周航記」について紹介したい。 Voyage pittoresque
autour du monde Resum g n ral des voyages de d couvertes de Magellan,
Tasman, Dampier, Anson, Byron, Wallis, Cabteret, Bougainvilles, Cook, LaP
rouse, G.Bligh, Vancouver, ……
Publi sous la direction de M.Dumont
d'Urville, capitaine de vaisseau. Accompagn de Cartes et de nombreauses
Gravures en taille-douce sur acier, d'apr s les dessins de M.De
Sainson, Dessinateur du Voyage de
l'Astrolabe.
2巻本で、1834ー5年にパリで刊行されている。
内容は、架空の航海記で世界一周をしながら、各地で上陸をして、人々と交流をしたり、観察をするというものである。2巻合せて120章、図版は約560点掲載されている。そのうち、琉球については2章、日本は4章があてられている。 デュモン・デュルヴィルは、ミロのヴィーナスの発見者(正確には、発見の報告者)として、フランスでは著名な航海者で、その名をパリの16区の通りにも残している。世界周遊航海を3回行ない、南極探検も試みているが、琉球や日本には、全く来ていない。この著作にある琉球や日本についての記述は、ブロートン
W. R. Broughton、ホール Basil Hall1),マクロード J. M'Leod,ビーチーF. W.
Beechey2)らの航海記録をまとめたものである。 「図説世界周航記」は、版を重ね、また教科書ともなったもので、これをフォルカード神父が読んで、琉球の通訳たちにその内容を示している。 琉球に関しては、図版9点が掲載されているが、それぞれの図版は、他の航海記からの写しである。そのうち、3点をここに示す。人物の首の角度や表情、背景が少し異なるだけで、構図は全く同じである。また、この3点は、『幕末日仏交流記』の原著でも挿絵として使われている。
この「図説世界周航記」についての概略は、小川早百合が、本年9月17日のキリスト教史学会大会で研究発表した。また詳細については、「十九世紀西欧における琉球情報と宣教師」として、論文発表する予定である。
1)
Hall,Basil“Account of a Voyage of Discovery to the West Coast of
Corea, and the Great Loo-Choo Island”(London 1818) 2) Beechey, F.
W. “Narrative of a Voyage to the Pacific and Beering's
Strait” (London 1831) 3) この著作は、ホールと共に来琉したクリフォード H.J.
Cliffordが中心となって、1843年に設立したイギリス海軍琉球伝道会の第7次報告書。同会から琉球に派遣したベッテルハイムの日記が所収されている。
|