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   ア ク タ   acta  第9号 
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                               1998/5/15発行

フ ラ ン ス 所 在 日 仏 交 流 史 史 料

 1996年4月から1年間、中島はフランスに滞在し、日仏交流史、特にキリスト教布教に関する史料の調査を行った。必ずしも十分な成果が上がったとは言いがたいが、パリを中心にエックス・アン・プロヴァンスなど地方都市の文書館に所蔵されている関係史料も一部確認することができた。今後は、こうした史料に基づいた研究を進めていきたいと考えている。
 フランスにおいて日本のカトリック布教に関する史料を主に所蔵しているのは、ケ・ドルセーにある外務省古文書室、ヴァンセンヌ城内の海軍省古文書室、国立公文書館、パリー外国宣教会古文書室などである。また、これ以外にも日本に派遣された宣教師の出身地の司教館、地方の図書館や文書館、あるいは個人のコレクションの中に貴重な文献が見られる。
 この内、外務省、海軍省、国立公文書館は必要な書類を提出すれば、比較的容易に閲覧が許される。宣教会、司教館は個別に交渉が必要であり、開館日、時間などは不定期な場合が多い。しかし、最近、教会関係の文書館もかなり一般に開放されており、書面による問い合わせにも快く応じてもらった。個人の所有になるコレクションには、公開されているものは少ない。
 現在、収集したものを整理しているので、「アクタ」紙上で紹介していきたい。お気づきの点をご教示いただければ幸いである。
(1)パリー外国宣教会古文書室
 パリー外国宣教会古文書室は、責任者の許可を得て閲覧できる。所蔵文書は膨大であるが、神学校(Seminaire)、各地の会計事務所(Procure)、国ごとに整理されている。
 日本について所蔵が確認されている史料は次のとおりである。最初の数字などは請求記号である。

 1)Japon:宣教師の書簡(主に宣教会への報告)を綴じたもの。
   568 Japon 1844-1860
   569 Japon 1839-1872
   570 Japon/Japon Meridional 1873-1876/1877-1884
   571 Japon Meridional et Nagasaki 1885-1887/1888-1905
   571A Nagasaki 1906-1927
   571B Fukuoka 1928-1948
   572A Osaka 1906-1926-1928
   573 Japon septentrional et Tokyo 1877-1890/1891-1900
   574 Tokyo 1901-1905
   574A Tokyo 1906-1920
   575 Hakodate 1891-1905
   575A Hakodate 1906-1931

 2)G.Japon:宣教師の書簡、メモなどで箱に入っているもの。
   以下、次号に続く。


イタリア人宣教師シドッティGiovanni Battista Sidottiに関する欧文史料

 昨1997年9月のキリスト教史学会大会で、「欧文史料にみる宣教師シドッティ」と題して、小川が研究発表した。キリシタン信仰が禁止されている鎖国下の日本へキリスト教再布教の志をもって、イタリア人宣教師シドッティは1708年、日本への潜入をはかり、新井白石の尋問を受けたことは、現在では、よく知られている。しかし、アクタ第4号でも紹介したカトリックの布教雑誌 Les Missions Catholiques の第16巻(1884)に連載された「18世紀の日本における宣教師」によると、シドッティが日本に潜入して後、江戸に連行されてからの消息は、1884年に至るまでカトリックの世界では、知られていなかったようである。
 研究発表の詳細は、『キリスト教史学』第52号(1998年7月頃発行)に掲載予定であるが、発表の際に配布したシドッティに関する文献リストを紙数の都合上、所収することができなかった。そこで、本号にシドッティに関する欧文史料一覧と主要な究文献を掲載する。シドッティの同時代の18世紀は書簡類が中心なので、発信年順に並べた。19世紀は、主として『西洋記聞』の翻訳や伝記が史料となるが、これも発行年順とし、20世紀の文献は、主に日本での学術研究書であるが、これも統一のため、刊行年順に並べた。文献は、今回の論文で扱ったことに項目に関するものは、できる限り集めたが、網羅することはできなかった。またシドッティに関連するものでも、論文で扱わなかった事項に関するものは、調査が及んでいない。詳細な文献案内としては、宮崎道生校注『新訂西洋記聞』(平凡社1968)がある。


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